東京アンブレラ基金 活動報告 (2020.4-2022.4)

2019年4月から運用を開始した「東京アンブレラ基金」。

翌2020年のコロナ禍による影響は凄まじいものでした。経済的な困窮により安定した住まいを失ってしまう方、緊急事態宣言に伴う「ネットカフェ」等への休業要請により居場所を追われてしまう方が続出しました。

東京都は新型コロナウイルス感染症の影響によって住まいを喪失した方に向けた一時宿泊施設の提供などを行なっていましたが、そうした公的支援につながるまでの一時待機場所や支援からこぼれ落ちた方たちの避難場所の確保が必要となりました。

また、つくろい東京ファンドではさまざまな市民の皆さまに支えていただきながら、住まいを失ってしまった方々を対象として「その一日をしのぐことが出来る緊急お助けバックを、簡単な受付で受け取り翌日支援へつなげる」支援スキーム「せかいビバーク」を運営しています。(https://sekaibivouac.jp/)この「緊急お助けパック」をお受け取りになった方々のもとに支援スタッフが伺うケースもあり、必要であればその後の宿泊費支援や翌日以降の生活保護申請同行などのフォローアップを実施しています。同様にほかの支援団体でも、ご相談者のもとに支援スタッフが駆けつけ、その後の支援につなげるという相談体制をとっているところも多くあります。

住まいを失う人の増加、支援団体による駆けつけ相談に対するニーズの高まり、駆けつけ相談時に宿泊場所を提供する必要性が明らかになったことを受け、東京アンブレラ基金は設立当初の助成規模を拡大し、緊急宿泊支援を続けてきました。(現在は、1泊あたり¥6,000 × 7泊 まで助成しています)

■東京アンブレラ基金 2020年4月〜2022年4月の運用実績

合計支援泊数:1830泊
合計利用者数:771人
合計支援金額:¥ 7,840,254

【利用者内訳】

ジェンダー別
男性:521人
女性:192人
トランス男性:3人
トランス女性:2人
Xジェンダー:1人
無回答:52人

●年代別
10代:84人
20代:145人
30代:123人
40代:144人
50代:119人
60代:85人
70代以上:19人
無回答:52人

●国籍別
日本:699人
外国籍:22人
無回答:52人

■支援ケースの例
2022年、厳しい暑さが身に堪えた今年の夏。
Aさんは、新宿にある「せかいビバーク」の受け取りスポットで緊急お助けパックを受け取られました。その日は、つくろい東京ファンドが連携しているビジネスホテルに宿泊され、翌日、支援スタッフが相談に伺いました。
この面談時に、Aさんから「仕事は決まっているが勤務が始まるまでの居場所がない」とご相談を受けたため、東京アンブレラ基金の緊急宿泊支援を利用していただき、当面の居場所を確保しました。
それから数週間後、Aさんから支援スタッフに再び連絡が入りました。仕事を失ってしまったようで、その時のAさんはネットカフェで過ごされており身動きが取れない状況ということでした。
スタッフが緊急で駆けつけ、再度東京アンブレラ基金による緊急宿泊支援を利用してホテルに宿泊していただくという対応を取りました。
Aさんはその後、連携している団体のシェアハウスを利用され、生活保護の申請をされました。
Aさんのように就労の目処が立っている、あるいは実際に就労している状況であっても「傘」のない東京では路頭に迷ってしまう方がいらっしゃいます。緊急宿泊支援へのニーズはこのような形でも現れています。
また、仕事を失ってしまった場合にも支援団体がネットワークとして対応することで福祉支援につなぐことができました。

■今後の運用に関して
東京アンブレラ基金による緊急宿泊支援の主な目的はやはり、利用される方が公的な支援につながっていくことだと考えています。
しかしながら、コロナ禍の影響が日常化し「ポストコロナ」「ウィズコロナ」へと社会の関心が向いていく中で公的支援は縮小傾向にあることも事実です。
また、既存の公的支援ではカバーしきれない、就労していても緊急宿泊支援が必要とされるようなケースもあります。
公的支援という「屋根」の隙間を埋める「傘」のような支援の必要性は以前にも増して高まっているのが現実です。
この「傘」を少しでも広げるために、今後もさまざまな団体に東京アンブレラ基金を活用していただけるよう運営に努めてまいります。